市民が主役の奈良市政をめざす仲川げんの活動日記。

仲川げん

奈良市政の最近のブログ記事

昨年4月に開業した新斎苑の整備にあたり、一部住民から提訴されていた住民訴訟の確定判決を受け、その後の損害賠償請求訴訟に関して先日3月29日に奈良地方裁判所から和解案が提示(4月25日には和解条項案も)されましたので、現在、臨時市議会で審議がなされています。

今回、裁判所から示された和解案の主な内容は、

・被告仲川は原告(奈良市)に対し、本件の解決金として3000万円の支払義務があることを認める。
・また、被告樋口らも原告(奈良市)に対し、本件の解決金として3000万円の支払義務があることを認める。
・原告(奈良市)は、その余の請求を放棄すること。
というものです。 

制度的にも少し複雑ですので、以下、詳しく解説したいと思います。

まず、既に確定している住民訴訟では、奈良市が建設した新斎苑の用地取得に関し、価格が高すぎると訴えた原告住民の訴えが認められ、土地を売ってくれた元地権者と市の責任者である私個人に対し、奈良市の立場で、実際に支払った金額と鑑定評価額との差額1億1643万705円と遅延損害金を請求せよ、との判決が確定しています。

市の立場としては住民の利益になる火葬場を一日も早く建設することが必要不可欠と考えて、議会の承認も得て予算化し取得した土地が、後から一部の住民が「高すぎたので返せ」というのは無理がある、しかも法律上は用地取得額を決める明確な基準がなく(むしろ「土地価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算出」と示されていて、鑑定評価額通りでなければならないとは定められていない)、また過去の判例でも首長には一定の裁量が認められていること等を主張しましたが、結果的に最高裁(上告不受理)で判決が確定しましたので、その結果は厳粛に受け止める、と私もこれまで会見等で述べてきました。

ちなみに確定した判決の中でも「(同人(仲川のこと)自身の利益を図るなど違法不当な目的のために本件売買契約を締結したことをうかがわせる事情は認められない」と示されています。

話を戻すと、住民訴訟は二段階訴訟制度になっており、一段階目の住民訴訟が確定したことを受け、現在は二段階目の損害賠償請求訴訟にあたります。

注意すべき点は、一段階目の住民訴訟の判決内容は、「奈良市は仲川及び元地権者に対し、1億1643万705円(と遅延損害金)の損害賠償の請求をせよ」というものですが、仲川及び地権者に対しその額の損害賠償を命じたものではない、ということです。

あくまで奈良市に対して、仲川及び元地権者に対する損害賠償請求をせよというにとどまり、実際に仲川及び地権者に対し損害賠償を命じ、強制執行することができる状態にするためには、別途、損害賠償請求訴訟を提起し、そこで損害賠償を命じる判決が確定する必要があります(和解も可)。この制度は地方自治法242条の3第2項が定めているもので、一般的な訴訟とは異なり二段階訴訟の構造になっています。

一段階目の住民訴訟では、鑑定評価額を上回る支出は全額市の損害であると判じられ(一審では土地の価値はゼロ円との判決)ましたが、今回の損害賠償訴訟では前訴の時点では明らかにできなかった、市や市民の受けた利益についても総合的に考慮した上で、裁判所としての和解案が示されています。

ここでポイントは2つあります。まず1点は住民訴訟で確定した損害賠償額をその後の損害賠償請求訴訟で変更できるのか、という点です。これについては地方自治法上、額の変更だけでなく債権自体の放棄も可能とされています。

最近では東京都日野市において、ゴミ運搬用の道路を公園内に建設したのは違法だと一部住民が訴えた住民訴訟で市が敗訴。工事費の約2億5000万円を市長個人に請求するよう判決が確定したものですが、その後の議会で全額債権放棄されています。

また同じ県内の香芝市の事例では、最高裁で確定した住民訴訟の判決で約2億2000万円の返還請求を認めていた(一段階目の訴訟)にも関わらず、その後の二段階目の不当利得返還訴訟では、奈良地裁が1040万円、控訴審の大阪高裁が3170万円と、いずれも前訴判決と異なる額の判決が出ています。

このように、住民訴訟の判決がそのまま無条件にその後の損害賠償請求訴訟を制約するということではなく、地方自治法が住民訴訟と別に損害賠償請求訴訟を設け、直接強制執行できる効果を与えるのは損害賠償請求訴訟であるとしている法制度から考えても、本件でも二段階目の損害賠償請求訴訟で実質的な市の損害について本格的な審理がなされるのは当然であると考えられます。

この議論に対し特に行政法学者からは住民訴訟の意義を損ねるものとの批判もありますが、現行制度上、債権放棄も和解減額も明らかに認められており(さくら市では議会の権利放棄を無効とした高裁判決を最高裁が破棄差し戻し、その後高裁で改めて放棄有効の判決が確定)、また前述のように裁判所自らの判決でも、住民訴訟と異なる判決が散見されることからも矛盾はありません。

もう1点は一段階目の訴訟の効力が二段階目にどこまで及ぶか、いわゆる参加的効力に関する議論です。ここはやや複雑な話ですが、前訴においては原告が一部住民、被告が奈良市でしたが、この裁判に個人の立場の仲川と元地権者が実質的に訴訟参加できたかどうかという点が争点になっており、一年以上審理が続いていました。

民事訴訟法では当事者が実質的に訴訟参加できる「手続保障」を重視しますが、前訴で市と事実上対立関係にあった元地権者が、市と共同して訴訟に参加できる状態であったかどうかという点や、市長の仲川と個人の仲川が同じ主張ができたかどうかという点がポイントです。

少なくとも私に関して言えば、例えば、自己の負担を最小化したいと考える個人の立場では一定の責任を認めて金額面で争うような主張も可能ですが、方や同じ人間の中に存在する市長の立場としては用地取得の手続きや判断には一切問題がない、という主張をするしかありませんので、金額面ではいわば利害のねじれが生じます。行政の長としての責任は争う気は毛頭ありませんが、負うべき損害賠償額については二段階目の訴訟においてしっかりと審議してもらう必要があります。

また前訴の住民訴訟では、大阪高裁の弁論終結時点までに主張できた事実だけが判決の前提事実となりますが、その時点では新斎苑は完成しておらず、当然、合併特例債の活用により実際にどの程度市の財政負担が減ったかについても確定的に示すことはできておらず、また新斎苑の開業後の利用実績によって年間1億2190万5000円の市の収入増につながっている点や、これまでやむなく市外の施設を利用した際に市民が負担していた高額な火葬費用が激減(概算で1億2552万円の負担減)したことによって、市や市民が得た利益については、住民訴訟以降に明らかになったものです。

今回の和解案の中でも裁判所からは「本件売買契約の締結により、原告(市)は、不動産鑑定士の鑑定価格より1億円以上高額な金額を支出することになっていますが、これによって、これを上回る金額の財政負担を免れた可能性が相当程度あったと認められます」「さらに、原告は早期に本件買収地を取得し、早期に新斎苑の供用を開始することができたことによって、相応の経済的利益を取得していることがうかがえます」と、前訴の判決確定以降の行政の展開により市や市民が得た利益を考慮したうえで、仲川個人が3000万円、元地権者が3000万円、計6000万円を市に解決金として支払うことで、長年にわたる一連の訴訟を解決してはどうかという案が提示されたわけです。

市としては、仲川個人と市長仲川の関係性が複雑なこともあり、公正な見地から当該和解案を評価する為、顧問弁護士事務所である関西法律特許事務所からの意見書や、奈良市ガバナンス懇話会での3委員(上智大学法学部の楠茂樹教授、阪口徳雄弁護士、松山治幸公認会計士)からの意見を聴取しました。その結果、いずれの意見においても本和解案を受け入れることが妥当であると示されています。

先日2日には本会議で質疑が行われ、次は火曜日に特別委員会が開かれます。制度や状況は少し複雑ですが、何が市民にとって真の利益になるかは極めてシンプルですので、議会の賢明な判断に期待します。

昨日、3月定例市議会が開会しました。以下、市から提出した議案のうち、新年度予算に関する部分の提案主旨説明を掲載します。(読みやすくする都合上、実際の発言と一部表現を変えている部分もあります)

新年度予算の主要な施策の概要についてご説明申し上げます。

1)「暮らしやすく住み続けたいまち」
まず、重点分野の1点目でございます「暮らしやすく住み続けたいまち」について、でございます。この分野では主に、「防犯力の向上」、「防災力の向上」、「安心と憩いのある暮らし」、「より便利で安全な市役所へ」の4項目にまたがっております。

■防犯力の向上
まず1つ目の「防犯力の向上」についてでございます。市内では近年刑法犯の認知件数は減少傾向にあるものの、高齢者を狙った特殊詐欺は増加傾向にありますことから、市内在住の65歳以上の世帯に対し、特殊詐欺対策電話機の購入費用の一部を補助し、犯罪の未然防止につなげてまいります。

また子どもを対象とした声かけ・つきまといや女性を対象とした犯罪も依然として存在することから、平成28年度より犯罪発生率の高い駅を中心に設置を行ってきている防犯カメラにつきまして、新年度はさらに交通の要所となる道路交差点や集客スポット周辺等への設置拡充を図り、犯罪の抑止と検挙率の向上につなげてまいりたいと考えております。

さらに、住宅対象の侵入窃盗などに対しましては、地域ぐるみの防犯活動が効果的であるとされておりますことから、各ご家庭の門扉等に掲出をしていただく防犯シートを新たに配布し、犯罪が起こりにくい地域の構築を目指してまいります。


■防災力の向上
次に2つ目の「防災力の向上」についてでありますが、来年度は、災害時に避難所として利用されます市立の小・中・高校の体育館のトイレ改修を完了させることで、災害発生時のインフラ強化を図ってまいりたいと考えております。

また、デジタル同報系防災行政無線が聞き取りにくいエリアに対しまして、新年度に聴取区域調査を実施し、改善方策を検討してまいる予定でございます。


■安心と憩いのある暮らし
3つ目の「安心と憩いのある暮らし」につきましては、奈良市のみならず奈良県の玄関口ともいえる近鉄大和西大寺駅周辺につきましては、引き続き南北自由通路の整備を進めるとともに、北口南口双方の駅前広場を整備し、交通結節点としての機能強化につなげてまいりたいと考えております。この事業につきましては、平成32年度末の完了に向け、国に対しても重点的な対応をいただくよう、働きかけも行っているところであり、期間内に竣工するよう、さらに努力をしてまいりたいと考えております。

また、歩道整備につきましては、新たに、近鉄学園前駅を南北に走る市道「奥柳・登美ヶ丘線」につきまして、平成29年度内に事業認可を取得し新年度から本格的に改良事業に取り組んでまいりたいと考えております。この道路は、歩道が非常に狭い区間がある状況で、ベビーカーの方や車いすの方が行き来するのに困難な状況にあり、また、災害時には緊急輸送道路に指定されておりますことから、改良工事を進め、歩道の安全性を確保し、最終的には道幅18メートルの能力の高い道路に改良してまいる予定でございます。

また、その他の市が管理する道路につきましては、供用開始から年月を経過した路線も多く、全体的に老朽化が進んでおり、近年では道路上に発生した穴ぼこ等による事故発生により、市民の皆様の安全な通行に支障をきたす状態になってございます。また、道路橋梁維持につきましては、交通量の多い箇所等において大規模な改修工事を実施することができるよう、引き続き重点的に予算を配分させていただいたところでございます。

また、来年度新たに、民間事業者を対象に、折り畳み式スロープの購入補助を創設する考えであります。先日も、市内の障がい者団体の方が、バリアフリーツーリズムマップを作成されたとご報告にお越しをいただきました。これからの時代は、障害のある方も、世界の様々なところに出かけていくことが当たり前の時代になってきておりますことから、国際文化観光都市でもあります本市といたしまして、市内の各店舗などで入口にスロープをつけていただくことに対して支援を行おうとするものでございます。


■より便利で安全な市役所へ
次に、4つ目の「より便利で安全な市役所へ」につきましては、具体的には、ならファミリー内にある市民サービスセンターでの取扱業務について、新たに印鑑登録、マイナンバーカード事務の業務を追加し、各種証明書の取得について、コンビニ交付サービスを実施し、マイナンバーカードの普及も併せて、ICTを活用した窓口改革を進め、更なる住民サービス・利便性の向上を図ってまいります。

また、災害時には防災拠点となる市役所の本庁舎の耐震化対策につきまして、外部の専門家による委員会において耐震補強をしていく方針が出さたことを受け、新年度より耐震化に向けた設計を行ってまいりたいと考えております。この事業につきましては、国の緊急防災対策の財源を活用することとし、市民ニーズや周辺環境との調和ということについても視野に入れながら平成32年度中の完成を目指して取り組んでまいります。


2)「将来世代へ先行投資するまち」
続いて、「将来世代へ先行投資するまち」についてでございます。
この分野では主に子育てと教育を2本柱としており、子育てに関することとしては「待機児童解消」、「子育て応援」、「多種多様な子育て支援」の3項目、教育に関することとしては「きめ細かな学習指導の充実」、「奈良らしい教育の推進と教員の指導力向上」、「いじめ問題対策」の3項目で構成しております。

■待機児童解消
まず、「待機児童解消」については、喫緊の課題である、待機児童解消を早期に実現することを目的に取組を進めており、具体的には、特に待機児童の多い、近鉄富雄駅周辺及び近鉄学研奈良登美ヶ丘駅周辺地域にそれぞれ一箇所の民間保育園を設置するための整備費補助を行い、児童の受け皿を確保してまいります。

また、2歳児保育を実施されている私立幼稚園に対し受入補助を行うことで、特に2歳児の待機児童解消を図ってまいります。

また、私立保育所に対しては、施設建物を賃借されている場合、その賃借料の一部について国の制度を活用し補助することで、安定的な運営への手助けを行っていくとともに、保育士への給与改善費補助を拡大し、新たに宿舎借上支援についても補助を行うことで保育士確保にも力をいれていきます。


■子育て応援
次に、2つ目の「子育て応援」につきましては、子ども医療費助成制度について、これまでは助成対象者の拡大に力を入れてきたところですが、利用者からの声を受け、自動償還払い方式から現物給付方式に制度を変更し、医療機関への受診時の自己負担を軽減することで、更なる子育て支援に繋げてまいりたいと考えております。この制度については、平成31年8月からの制度開始に向けて、次年度はまずシステム改修を行う予定です。

続きまして、妊娠、出産、子育てに不安を持つ保護者に対しては、ホームヘルパーを派遣し、家事や育児の支援を行う事業を新たに展開してまいります。

■多種多様な子育て支援
また、3つ目の「多種多様な子育て支援」につきましては、子育て中の共働きや多子世帯の方々の経済的・精神的な不安を少しでも軽減することを目的に取り組んでまいります。
具体的には、現在、市内に2箇所ある病児保育施設を、新たに北西部地域でもう1箇所新設するための整備費補助を行うことにより、共働き家庭やひとり親家庭が増加する中、子どもが病気になったときに安心して預けられるような環境づくりを目指してまいります。

また、バンビーホームを利用されている児童に、夏休み中の昼食の提供を開始することで、児童の栄養バランスの向上や保護者の負担軽減を図ってまいります。費用といたしましては、1食当たり約350円とし、自己負担はうち250円と設定させていただきました。この金額は普段の学校給食1食当たりの金額と同じにさせていただいています。

このほか、ファミリーサポートセンター事業やポイント制度を活用した、多子世帯支援にも取り組んでまいります。


■きめ細かな学習指導の充実
「きめ細かな学習指導の充実」につきましては、これまでも少人数学級など非常にきめ細かな本市独自の施策に取り組んでまいりましたが、一方で現場の実情に合わせて固定的な観念に捉われず柔軟に対応していくことも必要であることから、さらに子どもたちの学ぶ環境、育つ環境をよりよくするために創意工夫をいたしたところです。

具体的には、独自の少人数学級については、これまで小学校の一部学年において本市独自の国基準を上回る配置をしていたところでありますが、このうち、小学校1・2年生の学級については、30人学級編制とし、3年生以上については国基準の40人とする予定です。様々な学校現場のニーズがあるなかにおいて、1クラスの児童数は少ないに越したことはないという意見がある一方で、例えクラスが30人であっても、特別な支援を要する子どもが増加しているなかにおいて、例えば教員が持ち場を離れ、教室から飛び出す児童を探しに行かないといけないということになかなか対応ができない状況があります。そういったことから、特別支援教育支援員を従来から大幅に増員し、140人体制とすることによって、よりきめ細かな学習と教員の指導への集中を確保するように取り組んでまいりたいと考えております。

また、子どもの学力データの分析から学習状況を客観的に把握する、本市独自の学習システム「学びなら」を引き続き運用することで、教員の指導力の向上や子どもの学習意欲の向上につなげてまいります。

また、スクールカウンセラーについても、不登校や発達障害など様々な保護者や教員などからの相談も必要とされていることから、さらに取組を充実させてまいります。
なお、これらの取組は、3点目の分野でもある「未来への成長戦略を描くまち」にも繋がるものと考えております。


■奈良らしい教育の推進と教員の指導力向上
次に、2つ目の「奈良らしい教育の推進と教員の指導力向上」につきましては、次代を見据えた本市独自の教育や奈良らしい教育の推進を更に目指し、教員の指導力についても更に向上を図っていくこを目標にしております。

具体的には、AEEや英語に堪能な地域人材の派遣、オンライン英会話などの英語教育を継続して実施し、児童・生徒の学習意欲の向上、また、平成32年度次期学習指導要領で外国語活動が小学校5・6年生から3・4年生まで拡大されることから、グローバル化が進む社会に対応できる子どもたちを育ててまいりたいと考えております。


■いじめ問題対策
次に、3つ目の柱である「いじめ問題対策」につきましては、児童・生徒の生命を守るため、いじめの早期発見や対応を迅速な対応を目的に学校支援コーディネーターを増員、また、いじめ対応支援チームも3チームに拡充し、児童生徒指導対策を更に力を入れてまいります。

また、24時間の電話相談受付や、スマホアプリなどからの簡単な報告相談の受付など、いじめ等で悩む子どもたちの立場に立った、よりきめ細やかな相談体制を構築してまいります。

また、今後の方針等の検討を行う「いじめ対策検討委員会」や重大事案に対応する「いじめ調査委員会」を新たに設置し、いじめ問題への抜本的な対策を更に進めてまいります。


3)未来への成長戦略を描くまち
続きまして、3点目の分野として「未来への成長戦略を描くまち」についてでございます。
この分野は、「ポスト東京五輪を見据えた成長戦略」、「県市連携事業」、「インバウンド推進事業」の3つの柱で構成しております。

■ポスト東京五輪を見据えた成長戦略
まず、「ポスト東京五輪を見据えた成長戦略」については、2020年度の東京オリンピック開催、更にその先も見据えた本市の成長戦略を構築することを目的にとしております。
具体的には、東京オリンピック・パラリンピック開催に当たり、本市にオーストラリア女子代表サッカーチームの合宿誘致など、ホストタウン事業に取り組んでまいります。

また、本市をホームタウンとして活躍している「バンビシャス奈良」など4チームと連携し、ホームゲームの開催や学校巡回事業などに取り組み、スポーツの素晴らしさを通し、青少年の健全育成や地域の活性化、また、スポーツを通じたまちづくりに努めてまいります。

さらに、鴻ノ池運動公園の整備事業として、公園の整備拡充と陸上競技場への大型映像装置設置を行い、県内唯一の第一種公認の陸上競技場としての機能向上並びに利用促進を図ってまいります。

また、隣接する旧奈良監獄につきましては2020年のリニューアルオープンに向けてPFI方式で国による取り組みが進められているところであり、先日の安倍総理の施政方針演説の中でも取り上げられたものであります。この旧奈良監獄の活用については本市としても、本市の成長・発展に非常に重要なものであると認識しており、施設へのアクセス道路を市道として整備することで、近隣住民の生活道路の通行量緩和及び安全確保につなげてまいりたいと考えております。


■県市連携事業
次に、「県市連携事業」につきましては、招集挨拶でも申し上げたところでありますが、県・国等との連携は今後益々重要になってくると認識しております。今後、更に連携体制を強化し、今、奈良市内を見ても様々な新しい公共事業や民間投資が非常にスピード感を持って進んできている現下の状況を千載一遇のチャンスと捉え、本市としてもさらに連携による取組のスピードアップを目指してまいります。

具体的には、これまで県と連携して進めている事業である、「八条・大安寺周辺地区」では、新たな京奈和自動車の(仮称)奈良インターチェンジやJR新駅設置を見据えたまちづくりをしっかりと図ってまいります。

また、「奈良公園周辺地区」においては、新たに近鉄奈良駅周辺のターミナル機能向上等のため検討予備調査を行うとともに、先ほど申し上げた旧奈良監獄の活用、また、鴻ノ池運動公園周辺整備等とも連携を図りながら、奈良公園周辺地区の総合的な魅力の向上に努めてまいります。

また、奈良の玄関口でございます「大和西大寺駅周辺地区」については、県・近畿日本鉄道と締結した協定をもとに中長期的な視点でさらなる協議を進め、「平松周辺地区」では、県総合医療センター移転後の跡地利活用について基本構想の策定など、それぞれの地区での取組をさらに加速させてまいりたいと考えております。


■インバウンド推進事業
次に、3つ目の柱であります「インバウンド推進事業」につきましては、古都奈良の持つ豊富な資産を活かした外国人観光客の誘致などを更に強化し、滞在型・周遊型の観光をさらに推し進めてまいります。

具体的には、フランス・パリで官民挙げて開催されます「ジャポニスム2018」におきまして、奈良県とともに、奈良の伝統行事であります「春日若宮おん祭」の出展等により参画をすることで、歴史文化への造詣が深い層、また富裕層などを中心に奈良への一層の関心を喚起し、2020年の東京オリンピック開催を見据えつつ、外国人観光客の増、また滞在型観光への進化を目指してまいりたいと考えております。

また、「古都奈良の文化財」が世界遺産に登録をされて今年の12月で20周年を迎えますことから、改めて文化遺産の大切さをアピールする取組も進めてまいります。

また、本年10月には、姉妹都市提携をいたしておりますオーストラリアキャンベラ市と締結25周年を迎えますことから、両市の友好親善を図るのみならず、市民間交流を実施できる地盤をつくり、継続性のある姉妹都市関係を両市で築き上げる取組を進めてまいります。

また、なら国際映画祭の開催につきましては、この事業が映画関係者はもとより、国内外から多数のゲストを迎え、奈良の素晴らしさを知ってもらう大きな機会でもあり、本市の文化振興に寄与することはもちろんのこと、観光振興や経済波及効果も見込まれることから、本市として開催を支援をしようとするものでございます。


4)市民と創る持続可能なまち
最後に、4点目の分野といたしまして「市民と創る持続可能なまち」についてでございます。
この分野につきましては、「市民協働」、「地球温暖化対策」、「循環型社会」、さらに「多様な福祉課題の解消」、「新斎苑建設事業」の5つの柱で構成をいたしております。

■市民協働
まず、「市民協働」については、超高齢化社会に向けた今後の対策など、様々な課題について行政だけでは対応ができない場面も散見されることから、市民との協働を更に進め、地域づくりを発展させていくための取組に力をいれてまいりたいと考えております。

具体的には、長寿健康ポイントやボランティアポイントなどポイント制度を引き続き活用し、健康増進や市民参画の意識向上を図るとともに、新たに地域自治協議会設立に向けた準備組織への補助を行うことで、これからの新しい地域づくりの基盤を整備し、地域コミュニティの再生へと繋げてまいりたいと考えております。

また、JR西日本より無償譲渡を受けました京終駅舎の復元整備につきましては、整備後に観光案内所を設けるとともに、地域の皆様方に主体的に運営に関わっていただく取組を進めており、ならまちの南の玄関口として、地域の、市民の力を活用した、更なる活性化に繋げてまいりたいと考えております。

また、地域から提案をいただき、現在取り組んでおります事業といたしましては、「平城第2号公園の活性化委員会」という取組がございます。行政と地域が連携をしながら公園のこれからのあり方、また運営について議論をさせていただいているところでございますが、この活性化委員会から提言がございました平城第2号公園のトイレ改修を今年度は行っていきたいと考えております。


■地球温暖化対策
また、「地球温暖化対策」につきましては、再生可能エネルギーの利用促進や温室効果ガスの削減など環境対策を目的に、本年度は災害時の電力供給を見込める家庭用燃料電池や蓄電池の購入補助、また市民共同発電所の設置補助などを行うことで、温室効果ガスの削減につなげてまいります。

また、環境問題を都市交通という面から見直しを図る行事も開催をし、更なる市民の意識啓発を進めてまいります。

さらに、交通事業者等に対する支援なども引き続き充実・拡充をし、循環型社会の形成に資する取組を加速させてまいりたいと考えております。

その中におきましては、現在老朽化が進んでおります現環境清美工場の改修やクリーンセンターの建設に向けた取組も大変重要だと認識をいたしております。
今後新たなクリーンセンターにつきましては、その建設の候補地を様々な角度から検証をしていくと申し上げているところではございますが、それまでの間、現在の施設を維持、延命化を図ることが大変重要でございます。
そのため、来年度につきましては、延命化のための改修事業に取り組むとともに、現在の焼却施設の負担を軽減するために、雑がみの回収を進めるための取組や、生ごみ処理機の購入助成の拡充をすることなど、施設の負担の軽減を図ってまいりたいと考えているところでございます。

■多様な福祉課題の解消
次に、4つ目の「多様な福祉課題の解消」について、でございますが、超高齢化社会の進展や子どもの貧困対策、また障害者の雇用など様々な福祉課題に総合的にきめ細かな施策を展開をしてまいりたいと考えており、具体的には、「(仮称)権利擁護センター」を設置し、権利擁護に関する相談窓口の一元化により、成年後見制度の利用促進を図ってまいりたいと考えております。

また、「(仮称)在宅医療・介護連携支援センター」を設置することで、在宅医療や介護連携に関する相談支援を行い、より効果的な連携の推進を図ってまいります。

また、生活支援コーディネーターにつきましても、各日常生活圏域に配置し、地域包括ケアシステム構築における地域の生活支援・介護予防の体制強化に努めてまいります。

更に子どもの貧困対策といたしましては、ひとり親家庭や生活困窮世帯の中学生を対象に、市内3箇所で学習支援教室を開催をする予定でございます。

また、障害者の雇用促進につきましても、市内企業者の理解を進めるための取組を新たに着手をする予定でございます。

■新斎苑建設事業
最後に、「新斎苑建設事業」についてでございますが、先ほどご提案申し上げましたとおり、当初の計画に沿いまして3年後の完成、そして運用の開始に向けまして、着実に整備を進めてまいりたいと考えておりますので、議員の皆様方のご理解・ご協力をお願い申し上げる次第でございます。

(中略)

以上、ただいま一括上程になりました案件につきまして、その概要をご説明申し上げた次第でございます。
ご審議を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。               

(以 上)

30年度の予算案を発表しました。街の成長や発展に欠かすことのできない子育て支援や都市基盤整備に重点的に予算を配分したことから、記者会見では「未来への成長」予算と表現しました。一般会計では1310億円(約34億円増)と過去最大となったものの、特別会計・企業会計を合わせた予算総額としては約18億円減の約2357億円となっています。

歳入では景気回復による個人・法人市民税の伸びが約3.3億円増、地方消費税の精算基準が大きく変わったことで5億円の増、また株式等譲渡所得割交付金(3億円増)や配当割交付金(1.5億円増)等も前年比で伸びを見込んでいます。(ちなみに株譲や配当割の一人当たり額は全国の中核市の中でほぼ毎年、奈良市がトップです)

市債(借金)発行額は約137億円と前年よりも13%ほど増えていますが、これは新斎苑や大和西大寺駅の周辺整備等、大型事業が集中している事が原因です。一方で借金返済にあたる公債費は約179億円を計上しており、新規借り入れよりも返済が大きく上回っている状況です。30年度末見込みの市債残高は約2678億円(全会計ベース)となり、前年比で39億円ほど減らしています。国の借金の肩代わり(臨時財政対策債)や過去の隠れ借金(三セク債)の影響分を除くと約1882億円となり、前年比で60億円程度の返済が進む見込みです。

ちなみに奈良市の市債残高は土地開発公社の負債(隠れ借金)を処理した平成24年の約2944億円がピーク。これは、公社の借金が市債残高にカウントされないのを良い事に、毎年利息のみを支払い(約2.5億円)、元金返済を先延ばしにしてきた歴代市政に終止符を打ったものです。一見すると急に残高が増えたようにも見えますが、単に表に出ただけの話です。

「借金」と聞くと悪いイメージが付いて回りますが、実際には一旦借りる形を採ることで国から返済分の交付税措置が受けられるような事業も多く、「事業の性質に合わせて賢く活用し、残高は着実に減らす」という考えが重要だと思います。今後も新斎苑やクリーンセンターの建替え等、何十年に一度のビッグプロジェクトも控えていますので、一時的に市債残高が増加する事もありますが、中長期では着実に借金を減らし、しっかりと将来世代に責任の持てる経営を心掛けていきたいと思います。


ここからは歳出面です。前年に比べて増額となっているのは定年退職の増に伴う人件費の増(約2.1億円)、障害者介護給付の増等に伴う扶助費の増(約6億円)、新斎苑整備事業(11億円)や大和西大寺駅の南北自由通路や北口・南口の両駅前広場整備(約39億円・含特別会計分)、市立こども園建設事業(約10億円)等です。

分野別では、子育て支援が新設保育所2園の整備事業(約3億円)、私立幼稚園2歳児受入事業補助(450万円)、病児保育施設整備事業(約4600万円)、バンビーホーム(学童保育)の増改築(約3億円)や夏休みの昼食提供(約7000万円)の他、民間保育士給与の改善や家賃補助などにも取り組みます。

教育面では奈良市独自の少人数学級を小1・2年生の30人学級は維持する一方、小3・4年生を国基準の40人とします(小5・6は既に国基準)。他方、特別支援教育支援員を97名から140名に大幅増員します。1クラスの児童数数は少ないに越したことはないという意見もありますが、たとえクラスが30人であっても、特別な支援を要する子どもが急増している中で、教員が持ち場を離れて教室から飛び出す児童を探しにいかなければならない、というような状況には対応できません。担任の教員には授業に集中できる環境を確保する事を優先し手法の見直しを行いました。AIを活用した子どもの習熟度に応じた学習指導「学びなら」事業や、経験年数の短い教員を訪問型で指導する研修事業などについては継続します。

防災防犯対策としては、昨年・一昨年に引き続き市内の犯罪発生率の高い箇所に防犯カメラを設置(約2200万円)、また災害時には避難所となる学校体育館のトイレ改修を完了(約3.4億円)させる他、防災行政無線の難聴エリアの調査も実施する予定です。福祉面では地区社会福祉協議会の機能向上を目的に、これまで市内7ブロックに1名ずつ配置していたコーディネーターを14名に増員。また権利擁護センターや在宅医療介護連携支援センターの設置など、医療と福祉と介護を一体的に支える仕組みづくりを加速させます。また、ひとり親家庭や生活困窮世帯の中学生を対象に市内3か所で学習支援教室を開設します。

最後に県市連携。6年後のJR新駅と京奈和自動車道(仮称)奈良インターチェンジの設置を迎える「八条・大安寺周辺地区」、奈良公園から鴻ノ池運動公園・旧奈良監獄までを包括した「奈良公園周辺地区」では新たに近鉄奈良駅周辺のターミナル化についてもグランドデザインを描いていきます。さらに32年度末の完成に向け着工している南北自由通路を含む「大和西大寺駅周辺地区」では開かずの踏切対策や将来の近鉄線移設も視野に入れたまちづくりに取り組みます。その他にも今春移転する奈良県総合医療センター跡地活用等についても県市がしっかりと連携して将来のまちづくり構想を練って参りたいと思います。

これらの予算案を含む議案は、2月28日開会の3月定例市議会に提出し、審議されることとなります。

■平成30年度当初予算案の概要
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1519025288353/index.html

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本日、一条高校の講堂改修プロジェクトについて、建築家の隈研吾さんと記者発表を行いました。このプロジェクトは藤原和博校長の看板授業「よのなか科」から始まったもので、現役高校生と世界的建築家のコラボという夢のような企画となりました。

しかも設計費用は寄附で賄うという財政に優しい配慮まで、、(2月2日現在で約1800万円が集まっています)さらに今日発表したのですが、新講堂に設置する椅子の背中に名前を入れる「想い出の椅子」スポンサーを募集し、事業費の一部に充てようということになりました。スポンサーはOBOGを中心に、一口5万円、800席で計4000万円を目標にしています。建築自体もコストを非常に意識されており、例えば人目に触れるファサード以外は打ちっぱなしで安価に抑えるなど、相当工夫して頂いています。

空に向かって伸びていく舳のイメージは、一条高校のスローガン「開拓者精神」を形にしたもの。また「よのなか科」での生徒たちとの交流の中で、部活を大事にしている印象を持ったことから、「一番気持ちの良いホワイエ部分を練習場所に開放」したとのこと。

素材について隈さんは、「ぜひ奈良の木を使いたい」と仰っていました。東京の新国立競技場を設計された際に全国の木材をお調べになったそうで、特に奈良の杉は「木目がきれいで素直な美しさがある」と高評価。木はファサード以外にもホワイエの天井部や舞台の音響反射板にも使用する予定です。

従来の日本の学校施設はどちらかと言えば、積み木を積んだような、デザイン性とはかけ離れたものが多かった印象がありますが、隈さんも「これからは学校も競争の時代。世界的にも個性的な建物のリクエストが増えている」と仰っていました。2020年の70周年を記念する新講堂は2050年の100周年に向かって悠々と激動の大海原を進んで行って欲しいと思います。

具体的な今後のスケジュールとしては、3月に育友会と真澄会(OBOG)からなる実行委員会が集まった寄附により隈研吾建築都市設計事務所と設計業務の契約を締結。その後、夏ごろをめどに完成した設計図面を市に頂き、市で建築費を予算計上。直近の議会に議案を提出し、可決されれば建設に向けて動き出す、という流れになります。

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■一条高校講堂プロジェクト
 http://www.naracity.ed.jp/ichijou-h/index.cfm/1,3618,31,html

MBSのvoiceによる、本市職員が病気休暇中に妻の経営するプールの売店で働いていたとの報道について、私の考えをお伝えします。この問題は市でも約1カ月前から情報を得、独自に調査を進めていた事案です。今回の問題が通常の不祥事と異なるのは、本人も取材に応えていた通り、当該職員に精神疾患の診断書が出ており(本人も公表を了解済)、外見だけでは一概に健康か否かが判断出来ないという点にあります。仮に「病気で休んでいるのに元気そうじゃないか」という短絡的な批判が高まることは、心の病を抱える多くの方々に何よりも辛い事だと思います。そのような事情もあり、市としては特に慎重に情報収集を進めていた矢先の今回の報道でした。私はこれまで8年間に渡り、職員不祥事にはかなり厳しく対応してきましたので、問題があれば見逃す事は絶対にあり得ません。
(これまでの私の取り組みについてはホルグの取材記事をご覧ください http://www.holg.jp/interview/nakagawagen/

一方で、市の調査に対し職員は、賃金さえもらわなければリハビリ中の家業従事は問題ないと認識していたようで、これは公務員の兼業禁止ルールに違反する恐れがあります。地公法では「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」とされており、無報酬での従事については直接的な定めがなく、市の服務規程でも同様。しかし皆さんがお感じの通り、社会常識として理解を得られるかどうかは別問題であり、私もそのように思います。また今回の従事が精神疾患の病気休暇中における加療の範疇なのか、それとも家業の手伝いが主目的かどうか、は今後の調査で明らかにしたいと思います。

また詐病の可能性があるか?という指摘(当然ながらこれは本人が否定している)については、通常どの組織でも、医師の診断書を添えて病気休暇を申請してきた場合には承認しない理由はほぼないと思います。ただし、明らかに申請内容が不自然で誰が見ても疑義があるような状態であれば、診察した主治医から意見を聞く、もしくは市の指定する公的医療機関や産業医によるセカンドオピニオンの取得を義務付けるという方法があります。後者のダブルチェックに関しては従来の制度にはなかったので、今回の問題を踏まえて新たに制度化をすることにしました。ただ、難しいのは心の内面に関わる疾患についてはよく本人の訴えも聞いたうえで丁寧に判断しなければならないと思っています。

その上で、問題アリ、となった場合には当然、外部有識者で構成する「奈良市職員分限懲戒審査委員会」において処分の要否や軽重を諮ります。ちなみに、本市の懲戒審査委は、5名の委員のうち警察OBの法令遵守監察監を含めると4名が外部からの登用です。他市では未だに市職員のみで構成されている事も多い中、いわゆる身内びいきがないよう公明正大に審査しています。

市民の皆さんからすれば、疑わしきは即罰則を、という声があがることもよく理解できます。一方、奈良市が過去にvoiceで報じられた中抜け事件では、明らかに現場を押さえた映像があるにも関わらず、最後までMBSがモザイクを外さなかった事により、被疑職員は否認。結局、最高裁まで争いましたが奈良市が敗訴し、懲戒処分が無効になるという事例がありました。この経験から、公益通報等により不祥事の疑いが生じた際には、必ず裁判でも勝てる証拠素材の収集を徹底するように方針を変えました。昨年、逮捕→懲戒免職になった別の事件では、約一年間にわたり警察の協力のもと内偵を進めるなど、市の権限や能力だけでは必ずしも十分でない部分については警察や弁護士等の専門家の力も借りて対応しています。行政が権限に基づいて厳正な処分を下す際には必要不可欠なプロセスですので、ご理解いただければと思います。

最後に、2日目の報道の中で、いかにも私が不祥事対策を諦めているかのような表現がありましたが、これについて述べておきたいと思います。当日のインタビューでは、「不祥事が一切ないという組織は逆に疑ったほうが良い。行政だけでなく民間も含め、組織という組織には必ず不祥事の種があると私は思う。これはイジメ問題も同じ。無くて当たり前と考えるのではなく、あってもおかしくないと考えるべき。学校も役所も無謬性の神話があり、問題は絶対にあってはならないという暗黙の了解がある。だから問題が起きても見て見ぬフリをしたり、闇に葬ることになる。大事なことは問題が起きた時にどう対応するかだ。」という主旨で答えました。その話題の流れの中で「不祥事をゼロにするのは不可能である」と匙を投げたように伝わってしまったことについては反省しています。当然、不祥事はゼロにしなければならないし、ゼロの状態を維持するために最大級の努力をするのは当然のことだと考えています。

今回の事案については、上記のように些か繊細な部分もありますが、引き続き慎重に調査を行い、当然のことながら明らかな問題があれば厳正に対処して参りたいと思います。

 昨日、三期目に向けての決意を表明しました。これまでの二期8年間で、様々な積年の市政課題と真正面から向き合い、常に市民感覚で立て直しに取り組んできました。相当な大鉈を振るってきましたので、いろんな衝突や抵抗もありました が、職員もよくついてきてくれたと率直に思います。改めて感謝します。

 私は、市を運営していく基本姿勢は前例踏襲や課題先送りではなく、市民目線で課題と向き合い、1つ1つ着実に乗り越えていくという前向きなものであるべきだと思います。声の大きな人、強い力に屈することなく、正直者が馬鹿を見ることのない、市民正義を貫くことをこれまでの8年間で特に重視してきました。

 この姿勢が、少しずつ組織の中にも定着してきたと実感しています。この市政改革の流れを決して逆行させることなく、さらに加速させることが私の役目だと思っています。


個別の政策としては
・ごみ収集の民間委託(今年度で56%)

・市債は全会計ベースでピーク時より216億円の減。実質的な市債は346億縮減し、将来負担比率も42ポイント改善するなど着実に財政再建に向かっている

・国税OBの登用や納税呼びかけセンターの体制強化等により、市税全体の徴収率は4.17ポイント向上するなど、公正な税負担を実現

・職員数は既にピーク時から1000名削減するなど、計画的に適正化が進展。各種手当についても見直しを行ったことで人件費総額を抑制。

・奈良県との連携により大和西大寺駅の開かずの踏切対策や、JR新駅整備など、住民の長年の課題が解決に向けて前進

・女性管理職比率30%の政府目標を、全国に先駆けて前倒しで実現

・全中学校での完全給食を実現

・全バンビーホームの19時までの延長預かりの実施

・学校園の耐震化は、ほぼ100%に

・市立看護専門学校の開校や、市立奈良病院の充実など、高齢化時代を見据えた地域医療の充実


など、目に見える成果がありました。これらの成果はやはり、市民・職員・議会の理解と協力があってこそ実現できたと思います。


 一方、市の最重要課題としては、やはり新斎苑問題を抜きには語れません。歴代市長が昭和30年代から取り組みながらも日の目を見ていない難事業ですが、先日は都市計画決定をいただくというところまで駒を進めることが出来ました。住民との話し合いもまだまだ必要な状況の中、途中で投げ出すわけにはいきません。最後の竣工までしっかりと見届けていくことが私の重要な責務だと考えています。

 この8年間で奈良は大きく変わりました。基幹産業である観光も、これまでの「夜が早い、うまいものがない、宿がない」という3大常識が一変しました。来訪者の滞在時間を延ばす「もう一食、もう一泊」の取り組みが実を結び、ホテルもこの10年で1.6倍、さらに2020年までに少なくとも9軒が進出する予定です。通過型でお金の落ちない従来の観光から、しっかりと雇用と税収が生まれる基幹産業へと、さらに構造転換を図っていく必要があります。

そのためにも、みなさまのご理解とご協力を賜りながら、改革を加速していきたいと考えております。

なお、政策集については骨子をお示しした上で、市民の皆さまとの対話を通じてより良いものにしていきたいと考えております。

引き続きのご指導、ご支援のほど、よろしくお願いします!


2016年7月20日 22:00 [奈良市政]

6月議会終わる

 3日に開会した6月議会では、まず開会冒頭で先日の環境部職員逮捕事件について陳謝、全容の解明と再発防止の徹底に全力を尽くすことを申し述べました。今回の事件は環境部の現業職員が、市民の持ち込みごみの中から換金性の高いもの(アルミ缶や自転車)を抜き取り転売していた事件、またその後の警察による捜査で公用車の燃料を窃盗した容疑が挙げられており、現在も捜査が続いています。環境部改革はこれまでも私の政策の肝であり、病気休暇の不適切な取得や勤務時間中の職場離脱(いわゆる中抜け)への対策、また特殊勤務手当の見直しや民間委託の拡大等、特に力を入れてきたテーマです。昔ながらの働き方を改める中で職員の意識も着実に変わり始めた矢先の今回の事件に私自身も強い憤りと責任を感じています。

 実は今回の事件への対応は従来と大きく異なります。これまでも環境部では不祥事が指摘される度に実態調査を行ってきましたが、市の調査能力や権限では限界がありました。またMBSのVOICEという番組で中抜け疑惑が報道され職員を処分した際には、ナンバープレートにかけられたモザイクが支障となり、最高裁まで争いましたが最終的に「疑わしきは罰せず」となり処分を取り消した事もありました。そのような経験から今回は当初から警察との連携を重視し、十分な証拠を押さえ確実に事件化するという方針を採ってきました。結果的に逮捕まで約1年がかかりましたが、逃げ得を許さないという意味で私は必要な手続きだと考えています。

 一方、今回の事件を受けて行った市の調査で明らかになったのは、一部の問題を起こす職員と管理職の力関係。関係者のヒアリングの中で捕された職員が従業員組合の幹部として幅広く影響力を行使していたという事が分かってきました。上司ですらモノを言えない雰囲気を作り出してきた、積年の構造問題を壊す必要性を強く感じています。幾度となく繰り返してきた環境部の不祥事体質を今度こそ改革し切るという強い思いで取り組んでいます。

 4月16日に起きた熊本地震では千回を超え る余震と共に、季節が梅雨や夏に向かう中で長 期化する避難生活にも心が痛みます。奈良市で は発災直後から九州地方の友好連携都市と情 報交換を行い、17日には庁舎が半壊する被害 が生じた宇土市に向け、飲料水10トンを送るな ど継続的な支援活動を行っています。大規模災 害が発生した場合、通常は被災した市町村から 都道府県等を通じ私たちの下へ支援要請が寄 せられますが、被災直後は中継役となる行政自 身が混乱、もしくは機能不全となる可能性があ ります。特に自治体庁舎の被災は致命的で、物 的なインフラだけでなく支援活動に必要な情報 や職員の命すら失われてしまう恐れがあります。

 一方、奈良市においては本庁舎の一部が耐震 性を有していないとの調査結果がこの度判明し ました。この問題は阪神淡路大震災後に実施し た前回の調査でも指摘されていましたが、まず は子どもたちの生活する学校園や緊急時の避 難場所を優先して耐震化に取り組んできました。 7年前の市長就任時に46%であった学校施設の 耐震化が今年度でほぼ完了のめどが立ったこと から、今後は本庁舎に着手したいと考えていた 矢先の熊本地震でした。

 市役所本庁舎は中央棟・東棟・西棟・北棟がつ ながった構造で、平成に入り増築された北棟以 外は昭和52年に旧耐震基準で建てられていま す。今回の調査では建物の強度や粘り強さ、形 状やバランス、経年劣化等を総合的に判断した 結果、0.3未満で倒壊の危険性が高いと言われ るIS値が西棟で0.03(基準の10分の1)を示す 等、早急な対応が必要という事が分かりました。 築年数だけで見れば県内でもさらに古い庁舎 もありますが、正庁(中央棟6階)や議場(西棟) のように、天井が高く柱がない独特の構造が特 に地震に弱いと考えられます。耐震化には多額 の予算がかかることから、今後は専門家だけで なく市民の皆さんからも十分意見を伺いながら、 長期的な視点に立ち対応策を早急に検討して 参ります。

 3月の定例市議会では、通常の本会議や委員 会に加え、新斎苑の集中審議が別途一日設けら れる等、まさに「新斎苑議会」となりました。災害 リスクや地元合意、また議員有志による対案等、 様々な論点が出されましたが、最終的には市か ら提出した関連予算の大半が削減される結果 となりました。

 まず災害リスクについてですが、計画地が土 砂災害警戒区域に入るのでは?という指摘があ りました。しかし、実際に施設を建設する場所は 地盤も硬く区域に該当せず、さらに必要に応じ て予防的な安全対策を講じることでクリアでき ます。また、住民集会での質問を受け、地すべり や土石流のリスクについての追加調査を行っ た結果、専門家からは「影響は想定しにくい」と の評価を得ました。さらに計画地内に保安林が あると建設できないのでは?という趣旨の質問 もありましたが、仮に用地の一部がかかってい ても、保安林を避けたレイアアウトにする、もし くは保安林自体の解除も可能なため、何の問題 もありません。(そもそも日本の森林面積の約 半分が保安林です)なお議員有志からの「対案」 については、最終的に正式な提案は出てきませ んでした。

 前号でも触れましたが、今回の計画は、昭和 30年代から歴代市長が候補地を探す中で、地 権者の同意や面積、各種規制や近接住居 (250m以内に住居がない)、また市街地からの 距離等の要件で市内全域から絞り込みをかけ た中で、最終的に選定した経緯があります。つ まり、仮にこの計画地がとん挫すれば、今後市 内で実現可能な場所を探すのは極めて難しい と言えます。また、総事業費約57億円のうち、 約22億円を予定している国の財源を得るには、 平成32年度末の竣工が必須条件です。逆算す れば、今年度には都市計画決定や事業認可手 続き、用地取得に着手しなければ間に合わない 恐れがあり、その結果市が巨額の財政負担を 背負うことになります。厳しい状況ではありま すが、まずは地元のご理解を頂けるよう、引き 続き交渉にあたらせて頂く所存です。


既にニュース等でご案内の通り、今3月定例市議会で活発な議論がなされた新斎苑計画に関し、奈良未来の会と自民党による修正案が可決され、新斎苑関連予算が大幅減額修正される形となったことを受け、今般地方自治法の規定に基づき再議にかけさせていただきました。昨日、議会でその趣旨説明を行いましたので新斎苑に関する部分のみ掲載いたします。
(原文のままですので、一部当日の発言と異なる部分があります)

議案第25号 平成28年度奈良市一般会計予算に対する修正可決に対しまして再議に付した理由を申し述べます。

まず、何よりも新斎苑について、であります。

今回の修正案では新斎苑関連事業費のうち、既に債務負担行為を設定し、業務委託を行っている環境影響評価業務委託の2,900万円を除く経費4,800万円が減額なされた訳でございます。

 この減額された経費4,800万円の内訳は、アクセス道路・橋梁予備設他設計業務委託、都市計画審議会資料作成業務委託、地元自治会等先進地視察業務委託、アドバイザリー業務委託、不動産鑑定手数料などであり、更には新斎苑建設推進課の消耗品費のような事務的経費も全て削減されようとするものでございます。

新斎苑建設事業は、昭和30年代に現火葬場のある白毫寺町からの移転要望を受けて、市が重要課題として、その時々の議員の皆様や市長をはじめとする市職員も実現に向け努力を続けてきたにも関わらず、60年近く経った今でも実現できていない状況でございます。

 現火葬場の移転新設が急務であることは、議員の皆様をはじめ全ての市民の皆様が理解をされ、また大いに期待されておられるところです。一方で現施設の老朽化や対応能力の著しい低下は明らかであり、多くの市民の皆さんからも一日も早い建替えを求める声が日に日に大きくなってきております。また新斎苑事業のスケジュールの遅れは、合併特例債を充当することができなくなり結果的に約22億円の市の財政負担が生じることもご承知のとおりでございます。

そのような中、現在私どもが交渉させて頂いている地元自治会の方からは「市民のために受け入れを検討しよう」という前向きなお声も頂戴している所であり、このことは我々にとっても、また市民にとっても大変ありがたいことだと感じております。長年地元の理解を得ることが困難であった新斎苑に一筋の光がようやく見えてきた思いも致します。もちろん、現時点では地元の皆様の合意に至ってはおらず、様々な反対のご意見も頂いていることは重く受け止めております。

私どもと致しましては、何よりもまず、地元周辺住民の皆様のご理解を得ることが最も重要と考えており、計画地周辺の土砂災害警戒区域等へのご心配についても詳細な調査結果や今後の継続的な対策等を含めしっかりとご説明申し上げ、不安の払しょくに最大限努めて参りたいと考えております。

その中におきまして、やはり今回の修正予算では、市内全域から選定した唯一の計画地である横井町山林への新斎苑建設事業を大きく遅延させることが懸念されます。また一定のご理解をいただき、前向きなお話をさせて頂いている地元周辺の皆様や地権者に対しても市の姿勢が問われることも考えられます。

市としては一日も早い新斎苑の実現に向け、さらなる努力をしてまいる所存でございますので、何卒ご理解を賜りたく、改めてご審議をお願いする次第であります。なお、新斎苑整備事業の内、地元説明関係経費や課の事務費等を除く事業関連予算については、地元周辺の皆様との協議を進め、ご理解を得た上で事業を進めてまいりたいと考えております。

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