対談

奈良を元気にする仲川げんの対談:越 直美 さん(滋賀県大津市長)のページです。

対談
越 直美 さん
(滋賀県大津市長)

平成29年4月2日に開催した市政報告会で滋賀県大津市長の越さんを迎え、トークセッションを実施。女性活用、働き方改革について語り合った。

ダイジェスト動画

人口減少に向けての取り組み

大津市の一番大きな課題として、人口が減っていくなかで余ってくる学校や市営住宅等の公共施設をどう維持するかというマネジメントの問題があります。例えば今後30年で言うと30%くらいお金が足りないのですが、どのように統廃合しながら良くしていけるか。この3月末に園児が1人になっていた市立幼稚園が民間の子ども園になりましたが、民間に保育園をやってもらうことで、幼稚園は廃園しましたが建物はそのままで子育て機能を残しました。

仲川公共施設の再編はいま大きな課題ですね。奈良市の場合も1960年から2000年までに人口が約3倍になり、それが今はちょっとずつ横ばいになり微減している状況。学ぶ環境としても小学校で6クラス以下になったら再編しなさいという基準を国が出していますが、奈良市内でも1学年1クラスの学校が多くなっています。1つの学校を建て替えに20億円くらいかかりますから、バス代を出してでも1つにしたほうがいいんかなと。それでこの4月に4つの小学校を1つにまとめるという話をさせてもらったんですね。なんとか残してほしいという声や地域の拠り所であるという部分もありますが、そもそも人口急増期にはなかったということもあります。それを答えありきではなく理解を得て進めていくか。大津市ではどんなふうに進められておられますか?

地域との話し合いはすごく大事だと思っています。大津市はまだ小学校の統廃合はしていませんが、4校を1つにされたというのはすごいですね。

仲川もともと保育園は1つにして子ども園になっていて、中学校はもともと1つ。小学校だけが4つに分かれていたのでイメージは持っていただきやすかったですね。ただ、小学校の給食費は県費で、統合して得するのは県や国なんです。地元と交渉したりスクールバスを走らせる場合の費用を持ったり、汗をかき費用を出すのは市町村ですから、モチベーションとしてはしんどいところがありますよね。

統廃合や施設をなくしていくのは楽しい仕事ではないですね。これまでは人口もどんどん増えて、新しい施設をどの地域につくるかが市長の仕事でしたが、これからは人口が減っていくなかで、どの施設をなくしていくかが仕事だと思います。

越氏写真

大津のいじめ事件で変わったこと/オープンな自治体をめざして

仲川げん写真

仲川越さんが市長になってから裁判は負け知らずですか?

そんなことはないです。

仲川市役所が訴えられることがすごく多くなっていて、奈良市役所にも弁護士が3人います。大津市も弁護士が来られてますよね?

大津市は2人です。1人は訴訟など市のなかの法律相談で、もう1人はいじめの問題を専門にしています。

仲川大津市、越さんと言えばいじめ対応のイメージが一番強い。あれは就任してすぐでしたね?

私が市長になったのは2012年1月で、中学生が亡くなられたのは前年10月でした。そのあと調査をしていじめ対策推進室を新設し、弁護士や臨床心理士を雇用して相談を受けています。

仲川教育委員会と情報のギャップがあるんでしょうか?

それまで教育委員会の問題は教育委員会の事務局が対応していましたが、私自身も教育委員会の対応は非常に問題があると思い、教育委員会を廃止すべきだと言いました。結局、国の制度として教育委員会は残りましたが、いまは市長と教育委員で総合教育会議をしています。

仲川なぜ大きな問題になったんでしょうか?

1つにはひどいいじめがあったということ、そして教育委員会が調査をしなかったということです。教育委員会は調査したと言っていたんですが、教育委員会の調査はいい加減なものでしたので、外部の弁護士らによる第三者調査委員会をつくり200ページ超の報告書にまとめてもらいました。それまでいじめの事件は全く調査されておらず、私が調査すると言ったときに教育委員会は反対しました。それは教育的配慮で、調査するとまわりの子どもたちが傷つくからと言っていたんです。でも実際子どもたちが書いたアンケートにはなぜその子が亡くなったのか知りたいと多くの同級生が書いていて、やはり調査することが大事だとなりました。今、全国で同じような事件が起こっていると思われるかもしれませんが、それは今まで調査をされていなかったからです。大津の調査があって法律が変わり、少なくとも調査をしないといけなくなりました。

仲川教育長さんと教育委員長さんが殴られる事件がありましたね。

当時はそういう事件もありましたし、多くの批判を受けました。背景の教育委員会の隠蔽体質や責任体質が大きかったと思います。

仲川そういう風潮がもともとあったんですよね?

あったと思いますね。それまで市内の小中学校全55校の毎年のいじめ件数は50数件しかなかったんです。事件があって各校にいじめ対応専門の先生を増やしたら、今は800件くらい上がってきます。今までだったら「いじめがあったことが悪い」となるんですけど、今はむしろいじめを見つけてすぐに報告し、すぐにチームで対応できるように努力しています。

仲川奈良市の議会でも同じ議論をしています。件数だけの問題ではない。もちろんゼロになることが望ましいけれども、ないことが正しいとみんなが思いすぎることによって、あるという事実をオープンにしなくなるのが一番こわい。うちの場合も環境部で職員が不祥事を起こし懲戒免職になりましたが、調べてみるとかなり前からやっていた。ガバナンスが効いてないという問題もありますが、問題を表に出して議会やマスコミからの批判を避けようとブラックボックスにしてしまう。これって行政全体の体質的な問題ですよね?

市民の皆さんにオープンにして情報を見てもらうことはすごく大事だと思います。

仲川情報開示専門の担当者を置いたり、制度を変えたりということはありますか?

今年は市民の皆さんが参加して事業仕分けをやろうと思っています。市がやっているいろいろな事業を市民の皆さんに理解してもらい、政策過程にもっと市民の皆さんに入ってきてもらうということができればと思っています。

仲川学校も地域の人達がどんどん出入りすると、いじめやトラブルや不祥事があってもさらされる。行政施策もどんどん外の目にふれることによって問題点を早くオープンにしていけますね。

壇上の二人

空き家対策について

大津市では空き家が約13%なんですが、郊外の空き家もあれば、町の空き家もあって、今度ゲストハウスに改修します。奈良では「町家バンク」というのが流行っていますね。

仲川町家バンクはベッドタウンや元ニュータウンの空き家をマッチングするのと、昔の街並が残っている奈良町というエリア、山間部、田舎の方の農家住宅の3つに分類して、NPO法人空き家コンシェルジュにマッチングしてもらっています。また、親のそばに住む場合は市が改修費用の一部を補助しています。最近は町家と田舎に引っ越したいという人がものすごく多くて、町家はもちろん、田舎は貸す家がないくらいにニーズがあります。自分で家を改修したり、茶畑とか農地も借りて自分たちでやりたいとか、そういう志向の方が増えてきている。都会へのアクセスの利便性と自然環境のメリットの両方があるところは踏み込んでいきたいなと思っています。

二人の近影

越 直美 (こし なおみ) プロフィール

2012年、最年少女性市長として大津市長に就任。2015年に大津市長としての実績が評価され、世界経済フォーラムでヤング・グローバル・リーダーに選出される。