対談

奈良を元気にする仲川げんの対談:吉田 雄人さん(神奈川県横須賀市長)のページです。

対談
吉田 雄人 さん
(神奈川県横須賀市長)

平成28年11月3日に開催した市政報告会で神奈川県横須賀市長の吉田さんを迎え、トークセッションを実施。中核市市長会や市債減への取り組みについて語り合った。

状況を前向きにとらえ、風向きを変える

吉田仲川さんの先ほどの市政報告のうち、ほとんどの時間を新斎苑の話題に割いておられました。奈良市は他にも大きな課題がたくさんあるなかで、本当に何度も足を運び、時間をかけて取り組んでおられるということが分かりました。

私も市長就任早々に、2つある火葬場を1つに統合するという大事業をやりました。古い方の火葬場は、夏は蚊が多く飛ぶし、冬は隙間風がひどく冷たいですし、最期を迎えられた方を落ち着いて送り出す環境ではなかったんですね。その状況と必要性は住民の方にもご理解いただいていて、すぐに火葬場の統合は終わりました。

仲川横須賀市もなかなか大変だと聞いています。

吉田横須賀市でいえば、「百条委員会」が3つ一度に立ち上がってしまった時期がありました。全国で立ち上がる百条委員会の8割~9割の議題は、収賄など汚職に関わるものですね。

※ 地方自治体が議決により設置する特別委員会の一つ

仲川それぞれに難しい課題があるということですね。奈良市の人口が36万人に対し、横須賀市の人口は40万人強で中核市としてもほぼ同規模ですが、2013年に日本で最も人口減少が激しい街に選ばれてしまったというニュースもお聞きしました。

吉田2期目の市長選挙では「選ばれる街・横須賀」を掲げて闘ったんですが、その半年後に総務省から人口移動報告の発表を受けてしまいました。もう前向きにとらえるしかありませんでした。ここから下に下がることは絶対にないから、ここから上がる一方ですから頑張っていこうと。

仲川借金が多いとか、職員の不祥事があるとか、人口減少が日本一になるとか、百条委員会が3つ立ち上がるとか、いろんなハードルがありますが、その状況をどうとらえるかで対策は変わってくると思います。立ち止まるのもひとつの選択ですが前向きにとらえて、どういう風向きするかは考え方によって変わるものだと思っています。

吉田横須賀はすぐそばに横浜や川崎があって、残念ながら企業誘致では太刀打ちできません。しかし、大企業の研究所が20年前からあることなど「横須賀ならでは」の特色をもっとアピールしようと考えています。IT関連企業の誘致や創業支援で集積すれば、大きな工場誘致に必要な土地もいらないですし、10人くらいで1億円稼ぐような会社をたくさん集めてシリコンバレーならぬ「横須賀バレー」を立ち上げようとしています。

壇上の写真

「中核市を応援する国会議員の会」結成について

吉田横須賀市には市民病院が2つあるのですが、うち1つは老朽化が進んでいるので建て替えの話になっています。奈良市は初期投資ゼロで市民病院建て替えが進んだそうで、仲川市長、素晴らしいですね。その手法を教えていただけませんか。

仲川タイミング的なこともありました。これは前市長時代から案件を引っ張ってきて、私が市長になってから工事を発注したものです。公共建築とは費用がかかるもので、同じような病院でも、民間と行政とでは費用が異なります。民間と比べてお金がかかる行政の工事の、細かいコストを見直しました。大手ゼネコンが入札する際の品質を保ちながらコストを安くするため、例えば発注時の最低制限価格を下げるなど工夫をし、予算90億円のところを60億円で発注しました。東日本大震災があって人件費コストが上がる前だったからできたということもあります。国の補助金も利用しました。

吉田国の補助金をとるのも簡単なことではありません。仲川さんは中核市市長会の会長を2年務められて、30代の若さにしてそれぞれ権限の違う47の市長さんをがっちりまとめて、国に対してもきちんと要望を伝えてこられた経緯がありましたから、補助金や交付金も引っぱってこられたんでしょう。

仲川褒めていただいてもお茶ぐらいしか出せません。私が市長になったとき、吉田さんはすでに中核市の役員をされていましたよね。全国知事会というような集まりもありますが、会議をしただけでテレビに出たりしますが、私たちとは扱いが違いました(笑)。また最近まで、非自民党は自民党本部に立ち入り禁止っていう都市伝説があったりなかったり……。

吉田そこで仲川さんは「中核市を応援する国会議員の会」というものを立ち上げたんですね。今100名以上入っていただいていて、3党から副幹事が選ばれています。おかげで国からの扱いが変わってきています。

仲川地方の首長にとってはどの党に属するかということはあまり関係ないですからね。国の場合は政治や政党の影響がありますから。

次世代へツケを残さない財政に

吉田次世代への負担となる市の借金を意識しない市長は失格だと思うんです。横須賀市でも、土地開発公社が昔にあてもなく買った土地が、今は見えない負債となっている。奈良の場合はいかがですか?

仲川11月号の『しみんだより』にも書きましたが、借金を減らすために借金をするという変な話があります。土地開発公社は実際に土地を持っており、この100億円で買った土地を、この度10億円で売り、90億円の赤字を出しました。この時に初めて借金が目に見えるようになりました。前の市長までは土地のままで置いておいたので借金は表に出てこず、少なく見えていたということです。市債全体は27年度の単年度の決算でいうと、130億で返したお金が170億。差し引き40億くらいは返しています。

吉田経費を減らさないとそれは出来なかったと思うんです。人件費の切込みはされたんですか?

仲川そうですね。これより下げられませんよ、と歴代人事課長から言われました。ところが日経新聞に関西の町の公務員の年収比較が出ていたんです。そこには時間外手当とか特殊勤務手当は入ってこない。つまり本給を安く見せておいて手当を山ほど払う構図になっていたんです。今はその部分をだいぶ減らさせていただきました。

吉田4人くらい職員が捕まっていましたよね?「借金の見える化」という話がありましたが、「職員の悪事も見える化」したということでしょうか。

仲川インターネットの時代って怖いですね。事実です。

吉田早いうちに膿みはどんどん出したほうがいいですね。

仲川奈良は海なし県なんですけどね(笑)。これからも頑張ります。本日はご来寧いただきまして有難うございました。