「挑む!」古い慣習や停滞と闘い、社会を前へ進める! Cover Story『変える力を、行動で示す。~自治体間連携で、社会の仕組みをアップデートする~』

奈良を元気にする奈良市長仲川げんの公式Webサイトです。

古い慣習や停滞と闘い、
社会を前へ進める!

変える力を、行動で示す。

~自治体間連携で、社会の仕組みをアップデートする~

新しい自治体の姿を示していく

人口減少と少子高齢化が進む日本では、自治体が従来のようにすべての行政サービスや公共インフラを単独で維持するのは困難になりつつあります。奈良市でも、2004年(平成16年)に3,700人いた職員数は、現在2,500人と3割以上減少しています。こうした現実を踏まえ、奈良市では人材・施設・行政サービスを他の自治体と共有する「自治体間連携」の推進を重視してきました。
自治体業務の基盤は本来、全国的に共通化されるべきというのが国の基本方針です。住民サービスの水準には一定の均質性が求められる一方、地方自治体の独自性は、地域資源の活用や住民参加の仕組みづくりなど、別の領域で発揮できればと考えています。
また、近年では都道府県の中間的な役割が薄れ、市町村が地域政策の主導権を担う傾向が強まっています。奈良市はこうした構造変化を踏まえ、他の自治体と協力しながら、新たな自治体運営のモデルを模索しています。

奈良市の職員は20年間で3割減少
奈良市の職員は20年間で3割減少

若手市長との出会いが原点に

2009年の初当選以降、奈良市では、他の自治体の若手市長との交流を通じて、業務の標準化や連携の必要性を再認識してきました。当時は千葉市や横須賀市など、同世代の首長が各地で誕生した時期でもあり、意見交換の中から、自治体ごとに業務の進め方に大きな差がある現状が明らかとなりました。
こうした経験をもとに、奈良市では他の自治体との連携に力を入れています。佐賀県武雄市との観光誘客連携、茨城県つくば市との不登校対策に関する共同提言など、分野ごとに課題を共有する自治体同士が協力し、国に対して政策提案を行う動きも進めています。

2009年に当時33歳で市長に初当選
2009年に当時33歳で市長に初当選

“まちの外”と組むことで、もっとできる

これまで自治体は、施設整備や人材確保を自前で完結させることが前提でしたが、現在では隣接自治体や広域自治体と連携しながら、効率的な運営を進める事例が増えています。
奈良市では、生駒市と共同で消防指令業務を一元化し、119番通報から出動指令までの対応スピードと災害対応能力を強化。また、京都府の木津川市とは、はしご車を共同購入し、配備や運用を分担することで、全国初となる府県境をまたいだはしご車の運用体制を整備しました。
図書館機能についても、高の原駅前の北部図書館で奈良市と木津川市の利用者比率に応じた費用分担を行い、広域的な住民サービスの充実を図っています。観光分野では、明日香村、田原本町、吉野町と連携し、周遊型施策によって地域全体の誘客力を高める取り組みが進められています。
こうした連携は、いずれも合併ではなく、必要な機能の選択的な連携を基本としており、住民サービスの維持・向上を目的に実施されています。そして、連携を進める際には、奈良市が率先してリーダーシップをとることで、他の自治体からの信頼と協力を得る体制づくりにも注力しています。

木津川市との連携・協力に関する包括協定締結式
木津川市との連携・協力に関する包括協定締結式

未来志向で、合理的に、クリエイティブに

行政サービスの維持や施設存続が選挙の争点になることもありますが、将来にわたる持続可能性を考慮すれば、単独維持を前提とした施策には限界があります。自治体運営は、未来志向で、もっと合理的に、クリエイティブに考えていくべきだと思います。
民間企業では、生産性向上のための地道な改善努力が続けられていますが、自治体の業務プロセスは慣習に縛られていることが多く、抜本的な見直しの余地は大きく残されています。業務の見直しや連携を工夫するだけで、効率性を大きく向上させることができるという認識のもと、奈良市では積極的な業務改革と連携施策を引き続き進めていきます。

越境連携で変わる地域の未来

奈良市東部の月ヶ瀬地域を拠点とした「Local Coop大和高原」は、住民同士の支え合いや民間企業との連携により、さまざまな公的サービスを住民自らが提供する側に立つ「新しい自治の形」です。「ヒト・モノ・カネ」の資源制約が大きく立ちはだかる中山間地域において、郵便局の配達便とイオンのネットスーパーを組み合わせた「共助型買い物支援サービス」や、ドローンを活用した医薬品の配達実験など、ニーズの高い住民密着サービスを次々と創出しています。
また、従来は行政が担っていたコミュニティバスの運行や資源ごみの収集を請け負うなど、住民主体のユニークで自立度の高い挑戦に全国が注目。昨年は地方創生担当大臣も視察に訪れました。人口減少下でも地域や暮らしが衰退せず、一人ひとりが豊かさを実感できる社会を創るべく、今後は行政界を越えて近隣自治体と柔軟な連携を展開していきます。

Local Coop大和高原の取り組み
Local Coop大和高原の取り組み

「挑む!」代表的な取り組み①
Local Coop大和高原

市民からの
お声

月ヶ瀬では、買い物をするにも交通の便が悪く、高齢の方には特につらい状況だと思います。最近、「おたがいマーケット」や「コミュニティバス」ができて、少しずつ変わってきていると感じます。地域が主体的に支え合う取り組みだと聞きましたが、どんな仕組みなのか知りたいです。

奈良市の取り組み

少子高齢化と人口減少が特に進む東部地域では、持続可能な地域社会の構築を目指し、月ヶ瀬をモデルケースとした「Local Coop大和高原プロジェクト」を推進しています。行政だけに頼らず、地域住民や民間企業、NPO等と共に地域課題の解決に挑む新たな自治の仕組みです。
一般社団法人Local Coop大和高原の協力のもと、「月ヶ瀬ワーケーションルームONOONO」を拠点に多面的なサービスを展開しています。住民と地域外の人材が共に課題を考える場を設けたり、互助・共助コミュニティ型の資源回収ステーション「MEGURU STATION®」や、共助型買物サービス「おたがいマーケット」、農産物の地産地消を進める「大和高原直送便」などを運営。奈良市の地域プロジェクトマネージャーや地域おこし協力隊、企業からの出向者、日本郵便などとの連携で実現しています。
さらに、地域の交通を支えるコミュニティバスも運行しており、こうした取り組みを通じて、共助による地域経営の新たな社会モデル構築を目指しています。

仲川げんの視点

私は、行政がすべてのサービスを担う時代は終わったと考えています。人口が減る中で、今までと同じ住民サービスを同じ形で提供し続けることは不可能です。むしろ、地域に合った仕組みを一緒に創り上げていくほうが、住民にとっても持続可能な暮らしになります。Local Coopの取り組みは、その試金石になるはずです。
資源ごみの回収や、バスの運行といった公共サービスを、地域が自らの手で担い改善していく。そして、その過程において、新しい交流やアイデア、経済が生まれる。まさに、人口減少時代の希望だと感じています。
もちろん、すぐにすべての人に受け入れられるわけではありません。だからこそ、少しずつ信頼と実績を積み重ね、「自分たちのまちを自分たちでつくる」文化を育てていきたい。月ヶ瀬での挑戦が、奈良市全体、そして日本の地方の未来を切り拓く起点になると信じています。

「挑む!」代表的な取り組み②
気象情報の発表区域を東西に分割

市民からの
お声

奈良市に警報が出たからと学校が休みになったけど、朝からずっと晴れ・・・。「こんなに天気がいいのに、どうして学校休みなの?」と子どもたちも混乱しています。これでは、本当に警戒が必要なときに、危機感が薄れてしまうのではと心配しています。

奈良市の取り組み

2025年3月13日から、「奈良市東部」と「奈良市西部」の二つの区域に分けて、警報等が発表されるようになりました。
奈良市は東西に長く、市街地と中山間地で気象条件が大きく異なりますが、これまでは気象警報や注意報は全市一括で発表されていました。しかし、「警報が出ているのに晴れている」「感覚とズレがある」といった声が数多く寄せられていたため、2020年から気象庁に対し、発表区域の東西分割を要望。市防災会議や地域団体からも声を上げていただいた結果、東部7地区(都祁・月ヶ瀬・田原・柳生・大柳生・狭川・東里)が「東部」、それ以外の地域は「西部」として分割発表されることになりました。
これにより、地域の実情に即した気象情報の提供が可能となり、市民の行動判断に資する制度として改善されました。対象は、大雨や暴風などの警報・注意報、土砂災害警戒情報で、伝達手段も見直され、防災スピーカーの放送範囲なども東西で柔軟に対応しています。

仲川げんの視点

「警報が出ていても晴れている」という状況は、単なる不便ということだけではなく、「警報=大したことない」という誤解を生み易く、命を守る行動を鈍らせる危険性すらあります。2021年には私自身も気象庁長官に直訴するなど、気象情報の区分変更を粘り強く働きかけてきました。
気象庁にとって市単独での分割は異例だったようですが、変化を信じ、行動を重ねることで実現に至りました。これは、住民の安全を守るだけでなく、「社会の仕組みは変えられる」という強いメッセージにもなったと思います。
私たちは、仕組みを使う側であると同時に、仕組みをつくる側でもあります。これからも現場の違和感を見逃さず、一つひとつ課題を解きほぐしながら、より確かな安全・安心を奈良市にもたらしていきます。